libido
「君、男いたの?」

モノトーンの殺風景なリビングで、彼はそんな台詞を吐いた。

誰が見たって女性の部屋には見えないだろうこのリビング。

ほんの少し驚いただけの様子に、ため息を吐きたくなった。

「兄から居抜きで譲り受けたんです」
「へぇ。お兄さん、今は?」
「シンガポールに」
「有能なんだな」

兄が有能かなんて知りはしないけれど、兄と目の前のこの男は良い関係になりそうだなと考え、又ため息を吐きたくなった。

二人を会わせるわけにはいかない。
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