放課後、ずっと君のそばで。


放課後、ホームルームが終わると、私はいつもひとりで音楽室に向かう。


音楽室は、私のクラスのすぐ上の階にあるので、ホームルームで先生の話が長引かない限り、私が一番早く到着する。


今日も、一番乗りの、誰もいない音楽準備室に入り、トランペットが並ぶ棚から、自分の楽器ケースを取り出す。


ケースを開けると、少し湿った金属の匂いが鼻をついた。


1年の時に買ったトランペットは、所々に傷があるものの、丁寧に扱った楽器にはまだ輝きがある。


ゴールドのトランペットに、私の姿がいびつに写った。


マウスピースを楽器につけ、楽器ケースをまた棚に戻す。


「白石先輩! お疲れ様です!」


音楽室の入り口でハキハキと挨拶する女子の声がして、私は目を丸くして彼女を振り返った。


突然の声に驚いたんじゃない。


いつも私の次に来るのは立花くんだったから、そうじゃなかったことに驚いたんだ。




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