放課後、ずっと君のそばで。
唇がブルブルと震える。
落ち着け、落ち着け。
大丈夫。私は出来る。
毎日立花くんの演奏を隣で聞いてるでしょ?
メロディーはきちんと頭に入ってる。
心配することは、何もないよ。
私は目を瞑って、自分自身に語りかけた。
大丈夫、大丈夫。
何度もそう言い聞かせて。
私は目を開け、立花くんが準備してくれた楽譜に目を向ける。
よし、始めよう。
私は大きく息を吸った。
滑らかに。
とにかく柔らかい音で。
重要な箇所だけど、主張しすぎないように......。
全身がガチガチに緊張していて、10秒なんて短い時間に起こったことは何も覚えていない。
気がついたらオーディションは全員終わっていて、あとは結果を待つだけだった。