放課後、ずっと君のそばで。
「タクシーの方がよかったんじゃない?」
歩道が狭いせいではなく、お母さんの体が心配で言った。
それなのに。
「なぁに言ってんの。これくらいの距離歩かなきゃ! 体が鈍っちゃう」
そう言って、お母さんは笑った。
車のヘッドライトが、私たちを照らして遠ざかっていく。
午後6時半。
この時間帯が一番混む。
一車線しかない小さな道路だけれど、交通量は多い。
区画整理の計画が何年も前からされているみたいだけれど、一向に工事が進む気配はない。
早くどうにかなればいいのに。
ついでに、この狭い歩道も。
「ねぇ、莉子」
渋滞する車の音に、お母さんの声が紛れる。
私は返事をする代わりに、隣を歩くお母さんの横顔を見た。
「オーディション、ダメだったんでしょ?」
「え? なんで知ってるの?」