放課後、ずっと君のそばで。


お母さんが思い出すように少し空を見上げた。


ユニフォーム姿......。


あの日。

オーディションの順番が近づいて不安だったから、音楽室からコウちゃんのいるグラウンドを見下ろしたんだっけ。


だけど、グラウンドには、コウちゃんの姿はなかった......。


「いきなりウチに来てね、『おばさん、莉子のオーディション、今日なんです!』って、康介くんには珍しく強く言うもんだから最初はあんたに何かあったのかってビックリしたけど」


お母さんは言いながら笑う。


「去年は、そんなことなかったのにねぇ」


ため息混じりに言ったお母さんが、ゆっくり空を見上げた。


弱い光を放つ星が、お母さんの呼吸に合わせて瞬く。


コウちゃん、ウチに来てたんだ。


コウちゃん何も言わないんだもん。知らなかった。


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