放課後、ずっと君のそばで。


カッコいいって。

どうやって音を出しているんだろうって。


入学式なんてそっちのけで、ずっとマーチングバンドの方ばかり見ていた。


自分よりも少しだけ年上のお兄さんお姉さんが吹いている。


すごいな。自分もやってみたいな。


初めて見た楽器に、キラキラと輝く夢を持っていた。


「あの時、お母さん本当にビックリしてね」


お母さんが、昔を懐かしむように笑った。


「だって、トランペットよ? この前幼稚園を卒園したばかりの子供が、いきなりトランペットが吹きたいって言い出したのよ?」


お母さんの言葉に、私も懐かしい思いを胸に笑う。


「でもまぁ、驚いたのと同時に、感心もしたわ」


「感心? なんで?」


「だってあなた、トランペットよ!? 音楽に興味を持つなんて思わなかったし、それになりより、何かに興味を持つほど、成長したんだなって、あの時は感涙だったわ」



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