放課後、ずっと君のそばで。


踊り場から少しだけ身を乗り出して見てみたけど、どこにもコウちゃんはいない。


私は唇を小さく尖らせ、クルリと階段の方を向き、壁に背中をつける。


トランペットを見つめ、ピストンだけで、ドレミファソラシドと、指を動かした。


手入れはきちんとしているはずなのに、何だかピストンが重く感じる。


校舎から、トランペットの音色が聞こえてきた。


板野さんだ。


ロングトーンの練習をしているみたい。


腹式呼吸をきちんとし、音程が安定している。


板野さんの強みは、曲の見せ場部分できちんと自分を主張できるところだ。


音が裏返ることもなく、得意のロングトーンを生かして演奏を盛り上げられる。


肝が小さくてすぐに緊張する私とは正反対。


すごく羨ましい、って、思う。



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