放課後、ずっと君のそばで。
私は、楽器を取り出してすぐに非常階段に向かった。
自主練の場所はやっぱりここがいい。
邪魔するものがなく、開放的な空間。
トランペットの音がどこまでも飛んでいく快感。
タンギングからロングトーンまで、忘れかけていた感覚を取り戻そう。
非常階段の踊り場からグラウンドを見下ろすと、サッカー部員がぞろぞろと揃いつつあった。
そこに、あたかも今到着したかのような素振りでコウちゃんがグラウンドに顔を出す。
努力している姿を見せないように努力するのが、コウちゃんの素晴らしいところ。
素早く1年生に指示を出し、部活を始める準備をしているみたいだ。
私は、いつもと変わらないサッカー部の様子を見下ろしながら、楽器をかまえてスゥーっと大きく息を吸う。
腹式呼吸。
肺ではなく、お腹が膨らむことを意識しながら。
優しく息を吐き出すと、唇が震えてトランペットから音色が飛んでいった。