放課後、ずっと君のそばで。
「ひとりでやるより、ふたりでやったほうが効率いいと思うよ」
「立花くん......」
「俺でも、少しはアドバイスできるしね」
ニヒヒと笑う立花くん。
無邪気に可愛く笑っているのに、中身はとても頼もしくて心強い。
さすがパートリーダー。
同じパートのメンバーのピンチにはいち早く駆けつけて支えてくれる。
立花くんがパートリーダーじゃなかったら、トランペットはまとまっていないと思う。
私は、休んでいたハンデを修正すべく、休憩なしで音出しをした。
立花くんにアドバイスをもらいながら、基礎練を続ける。
楽譜を開くことはせず、ひたすらロングトーン。
長期間使っていなかった唇に、マウスピースの感覚を再度覚えさせるためだ。
正直、ずっと基礎練なんて楽しくはない。
早くメロディーを奏でたい気持ちで焦る。
だけど、そのメロディーを奏でるために、基礎練はとても重要だ。
コウちゃんがストレッチを念入りにするのと同じで、私達吹奏楽部は基礎練を怠ってはいけない。
初心に戻る、いい機会だ。
酷使した唇がジンジンと痺れる。
唇を擦り合わせると、マウスピースの当たっていた部分が丸く凹んでいる。
隣の立花くんの唇も同じだ。