放課後、ずっと君のそばで。
「久しぶりに見た」
「え? なにを?」
私が眉を上げて聞くと、立花くんは私の唇を指差し顔を近づけてきた。
私は反射的に体を少しのけ反らせる。
「白石のマウスピースのあと」
目の前で笑う立花くんに不覚にもドリキとしてしまい、私は慌てて立花くんから目をそらした。
ち、近いよ立花くん。
私そんなことに慣れてないんだから、そういうことしないでよね。
本当......焦った......。
私は咳払いをして、この微妙な空気を切り払った。
そのあと、私達は集中して音出しをした。
腹式呼吸を長時間続けると、マラソンのあとのような疲労感が体を襲う。
頭は酸素不足でクラクラするし、力を入れていたお腹は筋肉痛寸前。
これでどれだけ練習をサボっていたか、すぐにわかる。
「そろそろ昼御飯にしようか。もう12時過ぎてるし」
立花くんの提案に頷く。