放課後、ずっと君のそばで。


「おめでとう。よかったな」


どう、返事をしたらいいのかわからなかった。


コウちゃんは海を見たままだし、今ここで頷いたって、コウちゃんには見えない。


だからと言って、『ありがとう』なんて、言えるわけがない。


静かな私達の空間を埋めるように、波が次から次に打ち寄せる。


強くなったり弱くなったり。


波の強弱に、私の心情も不安定になっていく。


「あの......コウちゃ......」


「これから、もっと忙しくなるな」


言いかけた私の言葉を、コウちゃんが止める。


何を言おうとしていたのか、自分でもわからないけれど、だけど、何か言わなきゃと出した言葉だったのに......。


「7月後半だろ? 県大会。もうすぐだもんな」


「.........」


「おまえなりに、必死にやってたからな。ホント、よかったじゃん」


前を向き続けるコウちゃんの後ろ髪が、強い潮風に荒く揺れていた。



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