放課後、ずっと君のそばで。
私の名前を呼んだ後輩の板野さんは、小さなため息をついて話し出した。
「どうしちゃったんですか? 先輩。さっきまで楽器吹いてたのに急にボーッとしちゃって」
「あ、ごめんね」
私は焦って姿勢をなおし、トランペットをかまえる。
目の前の楽譜に目を向け、コンクールの曲を奏でた。
「もう一回、ここ。ここのフォルテッシモで盛り上がるところやってもいいかな」
私は何でもない素振りで言い、立花くんの合図とともにコンクールメンバー6人で曲を仕上げていく。
何回も何回も苦手な部分をやり直しては、楽譜に注意点を書き込んだ。
楽譜の中は、赤ペンだらけだ。
だけど、私がもし、敗者復活で落ちていたら、この楽譜は真っ白なままだった。
赤ペンだからけの楽譜は、私にとっていいことだ。
そうだ。
いいことなんだ。
この楽譜と共に、ステージに上がるんだから。
今は、集中しよう。
集中、集中。