放課後、ずっと君のそばで。


コウちゃん家のインターホンを押すと、すぐにおばさんが出てきた。


「こんにちは、おばさん」


「莉子ちゃん~どうしたの? そんなに息をきらせて」


学校からノンストップで走り続けたボロボロな私を見て、おばさんが目を丸める。


私はヘヘヘと苦笑だけを返して、廊下の奥を覗き込んだ。


だけどコウちゃんの気配はなく、出てきたのは、リビングからの食欲をそそるいい匂いだけ。


疲れた体が癒され、私は思わず深呼吸した。


「はぁ~カレーのいい匂い」


目を閉じてうっとりすると、急に腹の虫が鳴き始め、私はお腹を押さえてまた苦笑い。


「カレーは康介の大好物だからね~。最近全く元気がないから、食べ物だけでも好きなものをと思ったんだけど......」


言いながら、どんどんおばさんの肩が落ちていく。


「最近、ずーっと部屋にこもりっぱなし。出てくるのは学校に行くときだけね」 


「そう、ですか......」


やっぱり、学校でのコウちゃんの笑顔は偽物。


家ではこんなに塞ぎこんでるなんて、誰も思わないだろう。


七夕祭りにコウちゃんを誘おうと思って来たのに、また躊躇いが生まれた。


手に握ったままのチラシをギュッと握り返す。



< 205 / 312 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop