放課後、ずっと君のそばで。
コウちゃん家のインターホンを押すと、すぐにおばさんが出てきた。
「こんにちは、おばさん」
「莉子ちゃん~どうしたの? そんなに息をきらせて」
学校からノンストップで走り続けたボロボロな私を見て、おばさんが目を丸める。
私はヘヘヘと苦笑だけを返して、廊下の奥を覗き込んだ。
だけどコウちゃんの気配はなく、出てきたのは、リビングからの食欲をそそるいい匂いだけ。
疲れた体が癒され、私は思わず深呼吸した。
「はぁ~カレーのいい匂い」
目を閉じてうっとりすると、急に腹の虫が鳴き始め、私はお腹を押さえてまた苦笑い。
「カレーは康介の大好物だからね~。最近全く元気がないから、食べ物だけでも好きなものをと思ったんだけど......」
言いながら、どんどんおばさんの肩が落ちていく。
「最近、ずーっと部屋にこもりっぱなし。出てくるのは学校に行くときだけね」
「そう、ですか......」
やっぱり、学校でのコウちゃんの笑顔は偽物。
家ではこんなに塞ぎこんでるなんて、誰も思わないだろう。
七夕祭りにコウちゃんを誘おうと思って来たのに、また躊躇いが生まれた。
手に握ったままのチラシをギュッと握り返す。