放課後、ずっと君のそばで。
賑やかな雰囲気の中、なにやらコソコソと耳打ちして慌て出す人達がいた。
周りは気づいていないみたいだったけど、私達3人は、その異変をすぐに感じた。
同じ学年の人達だったから。
私達はお互いに目を見合せ、慌てて走っていった人達を追うことに。
境内に向かう人達に逆らいながら走るのはとても困難だ。
しかも、私は浴衣だから余計に辛い。
私の前を愛美と立花くんが走る。
最初はふたりについていっていたのに、次第に距離を離された。
あぁ、もう最悪!
だから浴衣なんかで来るんじゃなかっ......。
「白石!」
もう走るのを諦めようとしたその時、人ごみで見えなくなったはずの立花くんが、私の目の前で手を伸ばしていた。
立花くん......。
私の手をギュっと強く握った立花くんが、私を振り返る。
「これでもう大丈夫」
柔らかく微笑む彼の目元が、屋台のオレンジ色の電気に照らされもっと優しく見えた。
突然握られた右手が熱を持っていく。
今まで頼りなかった足元が安定する。
離れないように何度も強く握り返す立花くんの手を見ては、ドキドキと加速する鼓動を飲み込んだ。