放課後、ずっと君のそばで。


「え、いや、違うよ」


恥ずかしい。


ガツガツ食べてたのはお腹が空いてたからじゃないのに。


いや、確かにお腹は空いてたけど、休憩なしに食べてたのはそうじゃなくて......。


「俺、全部食ったから先行くわ」


コウちゃんがおぼんを抱えて席を立ったので、私は慌ててコウちゃんの腕を掴んでとめた。


「待ってよ。コウちゃんがたくさん食べなきゃ。ずっと炎天下の下にいたんだから倒れちゃうよ」


私が心配して言うと、コウちゃんは眉を寄せて呆れて笑った。


「腹一杯食ったよ。おまえが食べてる姿見てるだけで俺は腹一杯になんの」


ドキっ!!


心臓を掴まれた。

鼓動が早い。

なんで? どうして?


合宿といういつもと違うシチュエーションだからか、コウちゃんの言動や行動にいちいちドキドキしてしまう。


〝色気より食い気〟


いつも言われていることなのに。


何も特別なものはないのに。


「ゆっくり食えよ」


「もう行っちゃうの?」


ドキドキしてまともにコウちゃんを見れないのに、寂しくなる。


「人が多くなる前に風呂済ますわ」


そう言って、コウちゃんは軽く足を引きずりながら歩いていった。


もうちょっと隣で食べたかったな。


いつもと違う新鮮さが、私の恋を加速させた。


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