放課後、ずっと君のそばで。


前だけを向いていなければいけないのに、突然のことで顔を立花くんに向けてしまった。


「本心を言って」


立花くんの横顔は、もう全てを悟った表情をしている。


立花くんは、きっと私の返事はわかってるよね。


このタイミングで返事をすることになるとは思わなかったけど、きちんと、言わなきゃ......。


私は本番への意気込みと、立花くんに返事をして一歩を踏み出す覚悟で唾をごくりと飲み込んだ。


「立花くん。私はコウちゃんが好き。もう、昔からずっと」


ごめんなさい。とは言わない。代わりに......。


「ありがとう。私に気持ちを伝えてくれて」


私が言うと、今まで前を向いていた立花くんが目を丸くして私を見た。


だけどすぐに、白い歯を出して太陽のように笑う。


「よし! 何かスッキリしてやる気出た! 白石! やってやろうぜ」


小声で。だけども、力強く言った。


私もニッコリ笑い、立花くんと一緒に前を向く。


その時、ステージの明かりが明るくなった。


一気に眩しくなり、目を細くする。


先生が指揮台の横で一例すると、大きな拍手が響き、体中にビリビリと電気が流れた。


先生が指揮台にのぼる。


みんな背筋を伸ばし、指揮者に注目。


先生もゆっくり部員達を見渡し、素早く指揮棒をあげた。


先生が指揮棒を振った瞬間、全員が大きく息を吸う。


始まった。

私達の九州大会が。


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