放課後、ずっと君のそばで。

運命のオーディション



一年で一番嫌な時期がやってきた。


この前ニュースで梅雨入りの発表があり、毎日ジメジメと体中に湿気がまとわりつく。


おまけに蒸し暑くて常に汗ばんでいるから、体には汗と湿気のダブル攻撃で大きなストレスを受けている。


6月に入り、長袖から半袖に変わったんだけど、この湿気のせいで暑さが倍増。


長袖の嫌いなコウちゃんは、半袖に変わり喜んでいるみたいだけど、私は別に大して好きじゃない。


朝、私はコウちゃんの家に迎えに行った。


今まではずっと自転車通学をしていたけれど、梅雨の時期は徒歩。


だからいつも以上に早く家を出なければならないんだ。


「おせーよ」


コウちゃんは既に外に出ていて、黒の傘をさしながら眉を寄せた。


「あ、ごめん! 早く出たつもりだったのに」


私も黒の傘をさしてコウちゃんの元に小走り。


この学校の嫌な所は、傘の色が黒じゃなきゃダメだと言うこと。


だから雨の日は、学校の中はまるでカラスが群がっているかのように黒一色になる。


みんな同じ色の同じタイプの傘だから、小学生のように自分の傘に名前を書かなきゃいけないし、ダサいったらありゃしない。


雨の日くらい好きな色の傘を持っていけたなら、少しは梅雨が楽しくなるかもしれないのに。



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