放課後、ずっと君のそばで。


「今年はインターハイ出れるんじゃね?」


「あー、まぁ、だといいけど」


棒読みに近い感じで言うと、ゆっくりと私に目を向けた。


「莉子。今日は先に帰っとけ。俺、多分遅くなる」


「え? あ、うん。わかった。今日は先帰っとくね」


たどたどしく答えると、コウちゃんは何か言いたげの目を私に向け、だけど何も口にすることなくひとりで教室に向かって歩きだした。


その背中をこっそり目で追う。


長身の、少し華奢な体つき。小さい頃からどんなに食べても太らない体質だったけれど、サッカーで鍛えた体は程よく筋肉がつき、とても男らしくなった。


肘までまくっている袖口から出る二の腕を見るだけで、鼓動が高鳴る。


変かもしれないけれど、それだけ、コウちゃんの事が好き。


この事は、親友の愛美だって知らないことだ。


知られなくてもいい。


この気持ちは、ひっそりと、誰にも知られることなく、持っていたい。 


それだけで幸せだから。



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