放課後、ずっと君のそばで。


「おまえは、オーディション受からんと出られないだろ?」


「うん、まぁ、そうだけど」


「集中しろよ。あと1週間なんだろ? しっかりやらないと、後悔すんぞ」


コウちゃんはそう言うと、また前を向いて、さっきよりも早い速度で歩き出した。


後悔、か......。


後悔することになるのかな、私。


オーディション、どうなるんだろう。


コウちゃんが大股で歩くから、歩く度に傘からはみ出るエナメルバックが完全に雨で濡れていた。


コウちゃんのズボンの裾も濡れて色が変わっている。


私が立ち止まったままコウちゃんの背中を見ていると、コウちゃんはクルリと振り返り、眉間にシワを寄せた。


「何やってんだよ! 走れー!」


私は傘を持つ手にギュッと力を入れた。


コウちゃんに向かって駆け出すと、アスファルトの雨が足に跳ね返る。


ピチャピチャと音を立てる水の音が、オーディションに対する不安を刺激した。


雨の時期なんか無くなってしまえ!






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