黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
序章 吟遊詩人はかく語りき
―――そこの旅のお方。
見かけない格好ですね、何処からいらっしゃったんですか。
ああ、・・・そんなに遠くから。異国の方だったのですね。さぞお疲れでしょう。
そうでもなかった、ですか?
この街の様子を見たら疲れなんて吹っ飛びましたか。
ええ、ええ、わかりますよ。そうでしょう。
ここ、セルティカの王都は私たちにとっても自慢の場所ですから。
こんなにも、笑顔に、光に満ち溢れた都はそうそうありませんよ。
そして、私たちの誇りである、唄声に。
吟遊詩人を見るのは初めてなのですね。
なるほど、この国にいらっしゃったの自体が初めてなんですか。
では、是非とも見て行っていただきたい。
私たちが吟遊詩人と呼ばれる由縁を。
『私は貴方を助けたい―――』
――――――ふふ、そんなに喜んで頂けて良かったです。
勿体ぶってみましたが、私の専売特許という訳ではなくこの国に住む者は皆できますよ。
ああ、でも、これはあまり大きな声では言えないことなのですが。
この国の姫様・・・第一王女であらせられるお方がいらっしゃるのですが、このお方、実はですね・・・口がおききになれないのです。
はあ、それはそんなに大変なことなのか、と。
ええ、そうですね、それは勿論ですよ。
つまりそれは、唄を謳うことができないということで・・・私たちヒューマンの存在意義である力を、使うことができないということなのですから。
・・・想像もできませんが、こんなセカイで、力が使えないというのは、どのような気分なのでしょう・・・お可哀想な、ことです。
ああ、そういえば風の噂で聞いたのですが、なんでも他国の方々を招いて近々会談が行われるそうですよ。
この国ではやはりあまり思わしくないようですが、姫様に対する他国の方々の反応はどうなのでしょうか。
・・・などと、こんなこと旅のお方に言っても仕方ありませんね。すみません。
あまり人が通らないので、暇なのですよ、ええ。
事の序でと、1つ小さなお話を聞いていただけませんか。
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