黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
きぃんと、大気が軋む音がした。
恐らくだが、これは、封印が―――
解かれる。
そう思った瞬間、俺の耳は爆発音に潰された。
言葉では形容できない粉砕音。
砂煙に霞む視界を、扉1枚に隔てられたすぐ隣から、巨大な光の柱が裂いた。上へ上へ伸びていく、黄金の光。
塔の上部がごっそりと無くなっていた。
黄金の輝きが、空を割ってなお上へ伸びる。どこまで続いているのか、検討もつかなかった。
「素晴らしい、素晴らしいわ・・・興味もない文献を読み漁ってきたのはこの為だったのね。史実通り、いえ、それ以上に強大な力だわ!」
マリアはその光の柱に顔を黄金色に照らされながら、芝居がかった様子で両手を大きく広げた。
「ヒューマンの国王が隠してきたことも、もう公に曝されてしまったわね!セカイの人々はどんな反応を見せるのかしら?妖精は今でも存在していたのだと知ったら!
ふふ、“妖精の再来”よ!」
口の端を笑みの形に深く裂く。
「混乱に巻き込まれてはたまらないから、これでお暇するわね。騎士様。また会うことを楽しみにしているわ」
マリアは最後にそう言うと、さきほどの衝撃で崩れそうな塔の階段を足早に降りていき、赤髪が闇に飲まれて消えた。
彼女の発言は、狂っている、としか言いようの無いものだったが。
恐らく彼女だけではない。
これだけ大きな光の柱だ。ヒューマンだけではなくこのセカイ中の他種族も見ているはず。
その中で何人が、何十人が、何百人が。この力を手に入れたいと思ったのだろうか。