黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
きっと想像もできないほどに多いに違いない。
・・・俺は、そんな奴らから、彼女を守り抜けるのか?
プレティラ様が“希望”だと、“どうか、あの子のことを”と言った、あの恐ろしく危なっかしく不安定な少女を。
いや、考えるのはよそう。とりあえずは、“あいつ”から逃げおおせることが第1条件だ。
俺は抜いたままだった剣を鞘に納めた。そのきんっという金属音に背筋が伸びる。
気がつけば光の柱はきらきらと月光に煌めく粒子を残して収束していた。
俺は扉の向こうの光景をなんとなく察しながらも、ドアノブを握りしめ、押し開ける。
ぼろぼろになった扉は、驚く程に脆くなっていて、開けると外れて大きな音を立てて地に落ちた。
でも・・・それすらも気にならない。
外とは比べ物にならないほど濃密に部屋中を満たす光の鱗粉。
それはその部屋の中心にうずくまる人影から発生していた。
背から透き通るような長い羽を2対天に向かって伸ばし。
床に夢のように広がる絹のような髪は白銀に煌めいている。
目を細めなければ視界が潰れてしまいそうな程、全身が眩く発光していて。
その姿は想像以上に、美しく、綺麗で―――恐ろしかった。
目を奪われてしまえば最後・・・あっさりと囚われてしまいそうで。
人が入ってきたことに気がついたのか、少女はゆらりと身体をもたげる。
黄金の虚ろな瞳が、俺を捉えた。
もう幾度もなく見た瞳。でもそのまるで星を閉じ込めたような異常な耀きに、俺は魅入られ、指一本動かせない。