黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
「へりおとろーぷ・・・」
明らかに常軌を逸した存在になっているのに。もう常人には手の届かない存在に昇華しているというのに。
彼女は自分自身を守れない年端もいかない子供のように、声を頼りなく震わせた。
◇*◇
体が、熱い。
視界が数多の光に邪魔されて、ぼんやりしている。
その光の靄の向こうに紫が見えた。
私は今どうなっているの?どうなってしまっているの?ねえ・・・
自分でもはっきりと震えているとわかる声で少年の名前を呼ぶと、彼は怯えたように目を見張った。
ああ・・・なるほど。そうなっているのか。
ヘリオトロープの反応には少なからずショックを受けたけれど、よくわかった。
自分の体から発せられたのに、あの光は自分でも制御できなくて。
天井は消え失せ、月の光が直接私を照らしている。
こんな凄まじい、威力。
私はきっと、恐ろしい異形の姿になっているに違いない。
そんな姿誰にも見られたくない。私を見ないで。
でも、その一方で痛いほどに心が訴えているのだ。
・・・“私”を助けて、と。
こうなってなお、私には“私”が全くわからない。
“私”は、何なの?
そんなに皆から狙われるような、何の能力を持っていると言うの?
私はヘリオトロープを見つめていた瞳をそっと閉じ、ぎゅっと瞑った。
不意にぞっと背筋に悪寒が走る。
怖い、来る。“あいつ”が―――
「っ、ぼーっとするな!早く立て!」
「え・・・」
ヘリオトロープの叫び声に目を開ける。