黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う

「な・・・どうして・・・」

エルフは滅んだはずでは。

「ワタシが連れてきたんですよ。ああ、まさか滅んだ種族が、とアナタまで言うんですか?

野暮ですねぇ、誰かがそれを確認したんですか?してないでしょう?あくまで推測の域を出ませんでしたよね?」

そんな胸の内を見透かしたように、道化師は不相応なまでの穏やかさで語る。

「・・・何故、連れてきた」

ヘリオトロープが怒気を孕んだ声で詰問する。

道化師は数瞬押し黙った後、は、と漏らした。

ははは、と壊れたように笑い始める。

「何故?何故何故なぜ?そんなの決まってる・・・このつまらないセカイを潰すためだ。
そして俺がこのセカイの王になり、妖精たちの時代が始まる!昔のような・・・!」

とんと部屋に降り立ち、するり、と道化師が近づいてくる。

「後はここでお前を手に入れれば、全てが意のままだ!」

間に割って入ろうとしたヘリオトロープをまた黒い塊のような風が進路を阻んだ。

口調を荒らげた道化師が私の顔に触れようとする。

それをスローモーションのように感じながら、何故か、猛烈な怒りが体の奥から沸き起こってくるのもまた感じていた。

耳を誰かの悲鳴が震わせる。

それだけで、何か途方もないことが起こり始めていることだけはわかった。

そして、目の前に居るこいつが、その原因なのだと。

自分の野望のために多くの人を傷つけ、これからも傷つけようとしているのだと。

そして私の力を同じように使おうとしているのだと。

―――許せなかった。

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