黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う

「触れるな」

その道化師の仮面の下の瞳を睨みつけるように、そう告げる。

仮面に隠れた、卑怯な奴。

私には、お前の瞳が、見える。

道化師は私に手を伸ばし、あとほんの数センチを残したところでぴたりと動きを止めた。

・・・もしかして。

その様子を見て私は悟った。

もしそうなら、私がこの戦いを止めることができるかもしれない。


壊れた塔の壁に手をかけて、ぐっと足をかける。

「おい、何してる、やめろ!」

ヘリオトロープの静止の声を無視して、私は体を持ち上げた。

細い足場にぐらりと身体がかしいだけれど、そんなことは気にしていられない。どうにか2本足で立った。

私の姿に幾人かが気づく。声を上げる彼らに触発されて次々に顔を上げ始めた。

「おい、あれ、エルフだぞ!」
「さっきあそこから光があがったよなぁ?」

それを確認し、私は大きく息を吸った。

「―――戦うのをやめて!」

その声は夜闇に反響して、驚くほど大きく響く。


さっきの道化師の反応。

それに、初めのヘリオトロープの反応も。

・・・多分、私の力は、瞳が合うことによって“他人に命令する”能力なのだ。

だから、これで戦いは終わるはず。

「エルフの動きが止まったぞぉ!今だ、今だ、かかれぇ!」

・・・そう、思っていたから。

こう声が聞こえて耳を疑った。


何故?

動きが止まったのは全員ではない?

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