黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
広範囲に渡るそれは天井のように見える。
体勢からして何処かに横になっているようなので、とりあえず良く考えずに上体をがばりともちあげた。
体にかかっていたらしい毛布が肩から腕を伝って腰のあたりに落ちる。
体を動かすとスプリングが軋んでぎしっと鈍い音を立てた。
どうやら私はどこかの部屋の寝台に寝ているらしい。
体を改めて見下ろすと服も変わっていた。ドレスではなく動きやすそうなワンピースだ。
あの後、どうしたんだっけ?目を瞑って・・・
まだ覚醒しきっていない頭を必死で回す。
考えながら毛布を半ば無意識に指先で弄っていると唐突に音を立ててドアが開いて、私は咄嗟にベッドの上に片膝を立てて膝立ちになった。
肩で押されながら開けられたドアの隙間から紫の髪がちらりと覗く。
トレーのようなものを両手に抱えて部屋に入ってきたのはヘリオトロープだった。
「起きたのか」
「なんだ、きみか・・・」
気が抜けて思わずへたり込む。
ずるりと毛布を引き摺るようにしながら部屋に1つだけ置かれた木製の小さな机に近づき、椅子に腰かけた。
ヘリオトロープがその向かい側に座り、トレーを自分の前と私の前に置く。
「朝食だ。女将さんに訊いたら部屋で食べてもいいと言われたのでな」
言葉の通り、私の目の前には美味しそうな香りを漂わせるスープと、焼き立てなのだろう小さな一口大のパンがいくつかお皿の中で湯気を立てていた。
確かめるように耳に意識を寄せると、窓の外からちゅんちゅんと小鳥のさえずりも聞こえてくる。