黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
私は2人の会話を聞きながら視線を落とした。
“彼女”というのが母様のことなのだろうと、なんとなくわかったから。
クワオアは・・・母様と、交流があった?
ヘリオトロープは考え込む私と対照的に、クワオアのその言葉を聞くと、納得した様子で興味を失ったように砕けた焔の剣の残骸を拾い集め始めた。
こんな脆い剣あっていいのか、と小さな声でため息混じりに文句を言いながら、こちらを振り返る。
正確には―――クワオアの顔を。
「早く、村に案内してもらえないか。お前のその頬の印、村長の証だろう」
何気なく投げかけられたその言葉に私は一瞬動きを止めた後、ヘリオトロープの顔、クワオアの顔を順繰りに見た。
「・・・え?」
きっと随分間抜けな顔をしていたのだろう。ヘリオトロープが顔をしかめて私をじとりと睨む。
「何だ?」
「え、いや、だって、クワオアはあの時、『長の代理』って・・・」
「は?・・・あの頬の印はケットシーの長しか付けられないことになっている。あいつが長でないわけがないだろう」
困惑に2人顔を見合わせて首をかしげていると、黙りこんでいたクワオアが手を振った。
「まあまあ、2人とも慌てずにね。村には今から案内するわ。詳しい話は着いてからにしましょ?」
それだけ言ってくすくすと笑い出すと、左手を虚空に向けて伸ばす。
「『汝その姿を示せ』」
クワオアが小さくそう呟いた瞬間、きぃん、と鋭く耳鳴りがして視界が揺らぐ。
思わず頭に手をやった私の顔をちらりと見て、クワオアが先行するように歩き出した。