黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
どことなく気持ちの悪い沈黙が僅かに流れた後、それをかき消すようにクワオアがにこりと微笑んで口を開いた。
「キミたちは、何故、ここへ?」
軽い調子で発されたその言葉にヘリオトロープがつまらなそうに鼻を鳴らす。
「・・・わかっていて訊いているだろう。
俺たちは、女王―――プレティラ様にここへ行けと言われて来た」
私も数度頷く。
クワオアはそんな私達の様子を少し眺めて、はぁっと1度大きく息をついた。
「やっぱりこの役目、あたしに押し付けるつもりだったのね・・・プレティラ」
顔を伏せて次に上げた時にはもう巫山戯た様子は僅かにも残っていなかった。彼女の唇は引き結ばれ、私たちを見ているのに、本当はどこかもっと違うところを見つめているような不思議な瞳をしていて、私はこっそり息を詰める。
訥々と彼女は語り出した。
「私は、クワオア・ベルデ。ケットシーの長よ。」
そこで私の顔をちらりと見る。
「ごめんなさいね、アムネシアスムリィ姫。
代理というのは嘘よ。・・・私みたいな若造が長なんて言ったら他種族に絶対に舐められてしまうでしょ?だからああやって嘘をつくしかなかったの」
「・・・そういう事情なら・・・仕方が無いかな、と」
別に特定の私1人に嘘をついたわけでないのだから、そこまで謝られると逆に申し訳なくなってくる。
首を振る私の横でヘリオトロープが口を開いた。