黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
クワオアはそこで言葉を切るとやっとコップに口をつけた。ごくり、と喉が水を嚥下するのが見てとれる。
・・・この少女は、自分を不老不死だと言った。外見は全く衰えず、生命の際限も無いのだと。
自分が生きているのかわからないと。
喉が乾けば、彼女はこうして水を飲むのに。不死なのだからその必要がたとえなかったとしても。
悟ったような言葉と、無意識なのだろうがそれに相反している行動が、クワオアの想いを体現しているようで、私はどうしてか無性に苦しくなった。
ヘリオトロープも隣で声を発そうとしない。思っていた以上の重い事情にただ俯くしかない私に、クワオアは微笑む。
いいの、これは私の罪だから。と。
「あの日からずっと考えていたわ。どうしたらこの罪をできるだけ感じずに過ごしていけるんだろう、って・・・卑怯よね。でも卑怯なあたしはその方法を見つけたの。それは―――この村を守ること。
ずっとどうにか隠していたけれど、村人達にあたしが禁術を使ったこと・・・不死になったことを話したの。だからあたしにこの村を守らせてほしいと。
村人達は二つ返事で頷いたわ。あたしは村長になった」
「・・・だから俺に襲いかかってきたのか」
ヘリオトロープが至って冷静な口調で呟く。クワオアが深く頷いた。
「そうよ。村を守るためにあたしは、双剣の扱いを覚えたわ。そしてその剣で沢山の者達を退けてきた。
今日も、昨日も、一昨日も。
そして―――あの日も。あたしは侵入者に剣を突きつけた」
そう言ってクワオアはどこか懐かしげに目を細める。零れる言葉は随分物騒なのに、その唇は緩く弧を描いていて、不思議に思う。