黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
それがどうしてもアンバランスに思えて。私は気づけば彼女に質問を投げかけていた。
「その日はあなたにとって・・・何か違う日、だった、の?」
クワオアが頬に刻む笑みを深めた。そっとまぶたを閉じて、噛み締めるように、歌うように、ゆっくりと言葉を乗せる。
「―――睨みつけるあたしを見つめ返した、月と同じように光る金の瞳は震えるほどに美しくて・・・被ったマントのフードから零れる長い桃色の髪は眩く銀に輝いていた」
彼女は目を開けて私の瞳をのぞき込む。彼女が言ったのと同じ色であろう、私の黄金の瞳を。
クワオアは明確に答えはしなかったけれど、彼女が語った特徴に当てはまる人物を私は知っている―――嫌というほど、その姿は脳裏に焼き付いている。
1度唇を軽く噛んで、私は隣に顔を向ける。
紫の隻眼とばちりと目が合った。いつも無表情な瞳には、今は微かに哀れみのようなものが浮かんでいる。
彼は私と視線が絡んだことに気がつくと、すぐに逸らした。
・・・そうか、『俺が教えられることは何もない』と言っていたのはこういうことなのか、と。その表情でわかった。
ここでクワオアと話すべきなのはヘリオトロープではなく、私なのだ。
私は顔を前に向け獣耳の少女を見つめる。
「・・・そのひとの名は・・・」
震える声が部屋に響く。クワオアは、私に見せつけるような仕草ではっきりと唇を動かした。
プレティラ、と。