黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
強大な力を持ち恐れられてきたエルフがなぜ一瞬にして滅亡してしまったのか。それは現在このセカイにおいて最大の謎なのである。
とは言え、エルフが滅んだことでセカイは大きく変わった。
6種族の中で突出していたこの種族が存在していたときには、こんなふうに他種族と交流を持つことなど考えもできなかった。
いつ攻め入られるかわからず、また下手な行動をとれば目をつけられるかもしれなかったからだ。
またエルフを味方につけてしまえばその国の国力が大幅に上昇することになるため、抜け駆けしないかどうかお互いに見張りあっていたので、国家間の仲が良好なわけがなかった。
今ある程度力が拮抗しているからこそこうして危うい均衡が保たれているだけのことで、いつ何が起こってもおかしくはないのである。
1種族の欠如の下での平穏とは、皮肉なものだ。
私は円卓に座る面々を見据えながら、滑稽だと胸の中で笑う。
まあ、最弱の種族である私たちヒューマンが1番その平和の恩恵を受けているわけだから、とやかく言える立場では無いのだけれど。
隣に座る私がそんなことを考えているとは思ってもみないだろう人間の王、オルカイトルムネは愛想笑いを顔に貼り付けて再び口を開いた。
「では次は私の後継者を紹介させて頂いても良いでしょうか」
周りが頷くのを見てからオルカイトルムネは兄様に目配せする。
それを見て兄様が立ち上がった。
「改めまして、セルティカ王国時期国王、カムルレニティスです。カムルとお呼びください。どうぞ宜しくお願いします」
彼が口にする言葉もやはりマニュアル通りだ。