黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
きらきらと光の粒子が無数に舞い、鼻腔をくすぐる花のかぐわしい香りが部屋いっぱいに広がる。
誰ともなく、おお、と感嘆の声を漏らす。
惚けたように花を見つめていた兄様はその声にはっとしたように笑みを浮かべて礼をした。
「ううん、いつ見ても良いですね、Boostの力は。それに綺麗です。素晴らしい」
最初に口を開いたのはディアンだ。彼は満面の笑みを浮かべて手を叩く。
「さすが、吟遊詩人と呼ばれるのも頷けますね」
そう、ヒューマンは吟遊詩人と呼ばれることがある。
その理由は、先程のようにBoostの力は“唄う”ことで発動するからだ。
唄の質によって力の強さが左右される。詞選びが優れていて、想いが強いほど、強く対象の能力を押し上げることができるのだ。
今、兄様のBoostは木の成長を後押ししたのである。だから花の咲くはずのない季節に蕾が開いた。
使用する楽器は竪琴だったり太鼓のようなものだったり、使わなかったり、はたまた唄の内容も人によって変わってくるが。
・・・どちらにせよ。
つまり、口のきけない、私は―――
そんな私の思考を遮るように獣耳の少女が声を上げる。クワオアだ。
「そうね、さすがカムル様。将来有望なセルティカ王国の時期国王様、有名だもの。」
そこで言葉を切って私を見やった。はっきりと目が合ったが、逸らしては不敬にあたるので、そんなことはできない。