黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
まぶたを持ち上げると、ばちりと目が合った。
深い紫の隻眼が私を至近距離で見つめる。私は息も満足にできないまま、ただそれを見つめ返した。
・・・きみが見たいのは、私ではなくてこっちじゃないの?
ペンダントトップの虹の結晶を握るように手を動かしても、彼の視線は落ちない。
どうして。なぜ、私を―――見つめているの?
その問いを私が声に出す前に、ヘリオトロープはそっと視線を外した。
そのまままた何事もなかったかのように歩き出す。
・・・何だったんだろう。
どうしてもほんのりと熱を帯びる頬を軽く撫でながら、私は彼の背中を追ってただ真っ直ぐに歩いた。
そうして、私たちが始めにこの村で見た辺りに辿り着く。
ヘリオトロープはほんの数瞬足を留めた後、私の腕を掴む。
「・・・っあ」
声も満足に出せないまま、腕を引っ張られてよろめいてたたらを踏む。
視界がここに来た時のように、ぐにゃりと白く歪んだ。
*
視界に色が戻ってきたのを認めて、私は軽く頭を振った。そして思い出してフードを深く被る。
「・・・戻ってきた、んだ」
小さく零した私の声にヘリオトロープも微かに頷いた。外套に手を突っ込んで地図を出し道を確認して再度頷いた。
「ああ。急ぐぞ。」
そう言うや否や、まだぼんやりとあたりを見回している私の体をひょいと持ち上げる。
「ちょ、ちょっと」
触れられると布越しでも急激に上がる体温がばれてしまいそうで、私は反射的に手足をばたつかせる。