黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
路地と路地の狭間に隠れるようにしてぽつんと建った、こじんまりとした小さな店。ほとんど掘っ建て小屋と言っても差し支えなさそうな外見だ。
看板が吊るされていて、何気なくその文字を読む。
「『ダイモス・マホンの店』・・・?」
この人が“D”と彫られた銘の主、焔の剣の製作主なのだろう。
・・・どこかで聞いたことのある名前だ。初めて聞く名前ではない。
「ダイモス・マホン・・・」
私が記憶を辿ろうと眉間にしわを寄せていると、ヘリオトロープががしゃりと店の扉を開けてしまった。
からんころん、と思った以上に軽快なドアベルの音が大きく鳴り響いて私は首を竦める。
店の中も外見に違わずこじんまりとしていた。歩かなくても首をぐるりと回すだけで全てが見渡せる。
小ぶりな短剣から一体どんな大男が振るのだろうと考え込みたくなるほどの大剣まで壁一面に武具が置かれている。
それがずらっと並んでいるのを視線で辿っていくと、店の1番奥で1人の男がこちらに背を向けて何やら作業をしていた。
来客に気がついたらしくのっそりとこちらに首を回す。
「・・・来たか」
顔の下半分を覆うかと思われるような無精髭の偉丈夫。
ドワーフ“小人”とは思えない体格の良さ。
「・・・!」
顔を見てやっと誰かがわかって、私は息を詰めて両手で口を押さえた。
ダイモス・マホン。会談に出席していたあの人だ。
ドワーフの長。
そんな人がどうしてこんな所にいるのだろうかと思うものの、とりあえず私は息を潜めておくしかない。
私は話せないことになっているのだから。
それに、この人はドワーフという種族を率いる人物。
・・・警戒、しなくては。