黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
そんなことを思っていると大男は私の心情を見透かしたように片眉を少し動かした。
「ああ、そんなに構えてくれるな。ワシは“知って”おるよ」
「・・・どういうことだ」
ヘリオトロープが硬い声を出してかしゃりと剣に手をやる。
そんなひりついた空気をものともせず、ダイモスはあっさりと背を向けてまた何やらごそごそと作業を始めた。
「クワオアから便りが届いたのでな、朝1で」
そう言って投げやりな動作で天井を指さす。
それに釣られるように上を見上げると、梁に1羽の鳥が止まって美味しそうに一心に木の実を啄んでいた。伝書鳥だろう。
「・・・え・・・?」
あまり良い印象を話していなかったし、てっきり出発する前にクワオアがあんなに釘をさしてきたのはこの人に警戒するように忠告するためだと思ったのだが、早とちりだったようである。
便りを送り合うくらいの仲なのだ、この人を随分頑固な人物だと評していたあれは、クワオアにとってお互いにあまり気を遣わなくていい関係だというだけのことだったのだろう。
確かに冷静に考えれば交流が深いと考える方が自然だった。
ヘリオトロープと2人して黙り込むと、ぱんぱんと何やら黒く煤けた手を払ってダイモスがもう1度こちらを向き直った。
そしてヘリオトロープを見て手を差し出す。
「・・・貸せ。そのために来たのだろう」
「そうだが・・・」
あまりにも何も言ってこないダイモスに困惑したヘリオトロープが逡巡するように目を泳がせて腰の辺りに手をやる。
彼は迷いを振り切るように微かにため息をついた後、結局腰に下がったままだった焔の剣の鞘と、外套の内側から取り出した大きな布包みを手渡した。