黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
ダイモスはまず鞘を受け取り、それを明かりにかざすように斜めに傾けた。特に表情は変えないものの、1度だけ満足げに頷く。そして布包みをそっと開いた。
その手がぴたりと止まる。彼の藍銅鉱を思わせる群青色の小さな瞳がほとんど真っ二つに砕けた刀身を見つめた。
「“D”の銘―――ダイモス・マホン。お前が作った剣らしいな。
・・・すまない。良い剣だったのに、俺の力不足のために」
動かないダイモスにヘリオトロープが気まずそうに目を逸らして小さく零すと、ダイモスはその言葉を聞いて微かな動作で、しかし確実な動作で顔を跳ねあげた。
「いや―――そうではない。
むしろこんなに綺麗に折れるはずがないのだ。もっと歪に割れるはずだった。お前さんの剣術の技術の高さは充分賞賛に値するよ」
「どういうことだ?」
感情の起伏は少ないものの明らかに興奮した口調で捲し立てるダイモスに、ヘリオトロープは訝しげな視線を向ける。
誤魔化すように咳き込んで、ダイモスは口を開いた。
「・・・この剣はな、完成品ではない。だからとても脆くできていたのだ。
本来ならそんな剣は作りたくはないのだが・・・これは試作品だったのだ」
「試作品だと?」
「この剣はもともと世の中に露出させる予定は無かったのだよ。可能性を試しただけの試作品。
お前さんたち、この剣の力を見ただろう?・・・炎を纏う剣。そんなものがあるだなんて、このセカイの理に反しているからな」