黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
愛想笑いを浮かべようとして失敗して、仕方がないので私はただじっと彼女を見つめ返す。
クワオアはまだ視線を逸らしてはくれない。
こんな時、まだ何か?とでも言えれば楽なんだろうな、とぼんやり思う。
ただ隣に座る異母兄は“いもうと”がじろじろと眺められているのは気に食わなかったようで、少しだけ語気を強めて彼女に苦言を呈した。
「すみませんが、クワオア様。あまりアムリィを見るのは止めて頂いて良いでしょうか。妹は、人の視線には不慣れなので」
眉間に微かにしわを寄せる兄様に、クワオアがひらひらと手を振った。
「あなた達仲がいいのね・・・と、そんなことはどうでもいいわね。気分を悪くさせてしまったのならごめんなさいね、そんなつもりではなかったのよ。ただ、」
と、クワオアが一旦言葉を止める。
円卓の反応を伺うように。
「この娘、瞳が金色に見えるのだけど。とても綺麗な黄金色―――この色は、エルフにしか発現しないのではなかったかしら?」
種族特有の色。種族間の仲は良くなかったということからも納得できるが、このセカイでは異種族間の結婚はご法度とされているので、他の種族には絶対に存在しない色だ。
エルフの白銀の髪と黄金色の瞳はもちろん、ヴァンパイアの黒髪と紅い瞳、マーメイドの藍色の瞳も然り。
彼女が言っているのは、『何故ヒューマンなのにエルフの瞳と同じ色をしているのか』ということ。
それは本来ならあってはならないことで、それ以上にありえないことなのである。
エルフは滅んだ種族だからこそ、なおさらなのだろう。