黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
誰にも何も気づかれぬように。
唄国の、口のきけない“籠り姫”として。
受け入れられないのなら・・・そう、私からセカイを拒絶するの。
素知らぬ顔で穏やかな風にゆらゆらと首を降る紫の花を見つめながら、私はため息とともに小さく呟く。
「こんなセカイ、なくなってしまえば、いいのに。なくして、しまいたい・・・
―――・・・っ!」
背後に動く気配。風を切る音。
「―――なにやら不穏な言葉が聞こえたが?」
唐突に耳を掠めるように響いた低い囁き声と、かちゃ、と耳元で鳴る金属音。
「!?」
見なくてもわかる。
私の首に沿わせるようにあてがわれているのは刃物。
それも、刃が長く、何かを傷つけるために作られたのだとはっきりとわかる、戦闘用の剣。
誰だ。
気づかなかった。
いったい、なぜこんなことを?いつの間に私の背後に?
・・・いつから、聞かれていた?
いくつもの疑問が頭の中を渦巻き、えもいえない恐怖に身じろぎすると、ぱら、と自分の白髪が数本切れて風に舞うのが視界の端に映って、ぞっと悪寒が走った。
「おっと、動くなよ王族。」
「・・・」
王族だなんて。白い髪で判断されたのだろうけれど、私は生憎、良くも悪くも王族と呼ばれる者ではない。耳馴染みのない呼ばれ方にいまいちピンと来ない。