黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
やっと彼の深紅が、私の黄金を捉えた。それを確認して、私は微笑む。
不安げに揺れるその瞳に、私は特別だよ、と笑って秘密の作戦の端っこを解いていく。
「・・・私が、きみを元に戻してあげる。私は、その1度の道の誤りを、無かったことにしてあげられる。
そのために、これから私は―――私たちは、セカイを壊しにいくの」
「・・・どういう、」
疑問符を浮かべて目をさまよわせる元ヒューマンの青年に、私はとびっきりの笑顔を見せた。
「―――全部は教えてあげない。あと少しのお楽しみだよ。
それでね、私、そのための最後のピースがね、欲しいんだ。さっきタリオ、お礼させてって言ったよね?」
不穏な空気を感じたのだろうか、タリオが微かに身を引きながら頷いた。
「ねえ、タリオ」
私は、きっと彼にとって最悪のお願いごとを、口にする。
「私を―――眷属にして」
*
月の見える部屋で、私は窓枠に肘を乗せて、空を見上げていた。
風に銀に輝く白髪がなびいて、私の視界を埋める。
そして背中にある確かな存在を感じて、私は薄らと笑った。
こん、と微かなノック音が私の尖った耳朶を叩く。
私は返事をしない。しばらくしてノックの主は諦めたようにそのままドアを開けた。
「おい」
呼びかける大好きな囁き声に私は体を震わせて、でも振り返らないまま、微笑む。
「・・・ちょっと、返事して無いのに開けるのはデリカシーがないんじゃないのかなぁ」
わざと明るく発した私の声に、はぁ、と少年が後ろでため息をついたのがわかった。
「デリカシーもなにも・・・」
そうぼやきながら私の背に近づいてきて、くるりと私を振り向かせる。
深紫と黄金の双眸が、私を優しく見下ろした。
「後悔、してるのか」
私は私以上に不安げな表情を見せる彼に、笑ってみせた。
伸びた犬歯を、見せつけるようにして。