黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う

やっと彼の深紅が、私の黄金を捉えた。それを確認して、私は微笑む。

不安げに揺れるその瞳に、私は特別だよ、と笑って秘密の作戦の端っこを解いていく。

「・・・私が、きみを元に戻してあげる。私は、その1度の道の誤りを、無かったことにしてあげられる。

そのために、これから私は―――私たちは、セカイを壊しにいくの」

「・・・どういう、」

疑問符を浮かべて目をさまよわせる元ヒューマンの青年に、私はとびっきりの笑顔を見せた。

「―――全部は教えてあげない。あと少しのお楽しみだよ。

それでね、私、そのための最後のピースがね、欲しいんだ。さっきタリオ、お礼させてって言ったよね?」

不穏な空気を感じたのだろうか、タリオが微かに身を引きながら頷いた。

「ねえ、タリオ」

私は、きっと彼にとって最悪のお願いごとを、口にする。

「私を―――眷属にして」



月の見える部屋で、私は窓枠に肘を乗せて、空を見上げていた。

風に銀に輝く白髪がなびいて、私の視界を埋める。

そして背中にある確かな存在を感じて、私は薄らと笑った。

こん、と微かなノック音が私の尖った耳朶を叩く。

私は返事をしない。しばらくしてノックの主は諦めたようにそのままドアを開けた。

「おい」

呼びかける大好きな囁き声に私は体を震わせて、でも振り返らないまま、微笑む。

「・・・ちょっと、返事して無いのに開けるのはデリカシーがないんじゃないのかなぁ」

わざと明るく発した私の声に、はぁ、と少年が後ろでため息をついたのがわかった。

「デリカシーもなにも・・・」

そうぼやきながら私の背に近づいてきて、くるりと私を振り向かせる。

深紫と黄金の双眸が、私を優しく見下ろした。

「後悔、してるのか」

私は私以上に不安げな表情を見せる彼に、笑ってみせた。

伸びた犬歯を、見せつけるようにして。

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