黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
双子の片割れが花の名前をつけられているのなら、もう片方も花の名前からつけられているのかもしれない。
そうふと思いついただけだったのだけれど、タリオはいたって普通に頷いた。
「ルリジサ・・・僕はあの花も、好きですよ」
「花言葉とか、あったりする?」
私の言葉にタリオはそうですね、と呟いた。
「・・・花には良い意味の花言葉と、悪い意味の花言葉を持っているものがあるので、何とも言えないんですけど。『安息』、そして僕が好きな花言葉は・・・『勇気』、ですね」
「勇気・・・」
ヘリオトロープに、ルリジサ。素晴らしい意味を持つこの花々を名前として子につけた彼らの母親は、きっととても素晴らしい人だったのだろうと。
私はもう会えない彼らの母親、そして母様の妹であるというプルメリアに思いを馳せた。
「―――おい、行くぞ!」
きっと随分遅かったからだろう。声に顔を上げると先を行っていたヘルが戻ってきて手招いている。
私はタリオを見上げて、ぱっと頭を下げた。
「お世話に、なりました。そして、無理難題を聞いてくれて・・・ありがとう」
その言葉に思い出したようにタリオが私の犬歯を見つめた。
「いや、いいんです、これくらい。・・・期待して、ここから見ていますね」
「・・・うん」
どこか悪戯っ子のように笑う彼に頷いて、私はくるりと踵を返した。
後ろからドゥケレの明るい声も追いかけてくる。
「もういいか?」
隣に立った私に、ヘルが尋ねた。
私は頷いて、それから少しだけ逡巡して立ち止まった。
「うん。でも・・・ちょっとだけ、待って」
そう告げて、手首にあったあのアザレアピンクの革紐を、解く。
私は自らの長い長い白髪を手で梳いて束ねて、その革紐で、高いところで結った。
「どう?良いかな?」
兄様の白に、母様のアザレアピンク。
結った白髪を見せつけるように頭をかくんと揺らした私の頭にヘルが手を乗せて、くしゃくしゃっ、と掻き混ぜる。
「・・・いいんじゃないか」
そのそっけない言い方とは裏腹に彼の耳は赤くて、私は笑ってしまった。