黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
「・・・くそ、なんで避けねぇんだよ・・・!」
“少年”は両腕を下に振り切った姿勢で私の前に佇んでいた。
私はそっと近づいて、しゃがむ。私の―――ヘリオトロープの顔を見て、忌々しそうに舌打ちをした。
「・・・その顔が、1番嫌いだ」
「そうだろうね、きみは」
私はゆっくりと頷いた。そして、もう抵抗しない彼の顔に嵌った仮面を外す。それはあまりにもあっさりと彼の顔から離れて、からん、と乾いた音を立てて地に落ちた。
奇妙な道化師の面にずっと隠されていたその少年は、左眼を深紫、右眼は黄金色に輝かせている。
押さえつけられていた髪がふわっと風に舞い上がる。それは、花弁のような透き通った紫。
「ルリジサ」
私はヘリオトロープと酷似した、彼の弟の名を、道化師に告げた。
その瞬間、ぱき、と微かな音を立ててペンダントトップが砕け散った。変身が、解けたのだ。まるでこのセカイにこの顔は、2人しかいてはいけないのだと、そう私に教えるように。
ルリジサと、そう呼ばれた少年は、はは、と乾いた笑い声を零した。
「ああ、そうだよ、俺はルリジサだよ。ヘリオトロープと同時に生を受けた、双子さ」
無意識であろうかそのヘリオトロープという部分が強調されているのがわかって、私は問いかけた。
「きみは、ヘリオトロープが、大切、なんだね」
「・・・・・・はぁっ?」
ルリジサは意味がわからない、という顔をして固まった。
私はなおも言い募る。
「だってきみ、ヘリオトロープにだけでしょ、そんなに憎い、って思うのは。
・・・自分を見て欲しい、って思うのは」