黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
手遅れになる前に気づいて欲しい。その、憎しみの裏側にあるもの。
だってヘリオトロープに変身した私を斬ろうとしたルリジサの瞳は、泣きそうに揺れていたから。
今ならまだ、間に合うから。
「もう、きみを見てくれるのは、お兄さんしか・・・ヘリオトロープしか、いないよ」
気づいて。
ルリジサは微かに瞳を震わせたものの、その掴みかけたものを、はっ、と吐き捨てた。
「俺が兄貴と仲良くできるって?・・・母さんの愛を一身に受けたあいつと?できるわけがないだろ」
ルリジサは、愛に飢えて、狂ってしまった。
彼についての話を聞けば聞くほど、とても私と似ているという思いは強くなっていた。だから、待って、そっちへ行かないで。
「なんで、そう思うの」
「兄貴と俺の、名前を比べてみろよ。ヘリオトロープは『永遠の愛』、ルリジサは・・・『不幸な愛情』、だ。母さんが俺のことを邪魔に思っていたのは、間違いない。ああ、そうだ、そうとも、だから兄貴が憎いんだ・・・!」
私は早口に捲し立てるルリジサに、首を傾げた。
「違うよ、ルリジサ。ルリジサの花言葉は、『勇気』」
「は?」
「・・・花には良い意味の花言葉と、悪い意味の花言葉を持っているものがあるから。受け売りだけど」
その言葉を聞いて、ルリジサが黙り込んだ。ふるふると肩を揺らしている。どうしたのかと見守っていると、微かに笑い声が聞こえてきた。
「ふ、ふ、じゃあ俺は、ずっと勘違いしてた、ってか?そんなしょーもない勘違いで、ずっと兄貴を憎んでたってか?」
きっとそれだけではないだろう。でも、彼の憎しみには確かに亀裂が入った。