黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
はっきりと声の主が瞳に映り込む。
剣を私の首筋にあてがったまま、振り向いた私に驚いた様に固まる少年。
愛想の欠片も知らなそうな仏頂面を少しだけ崩しているが、無表情と大した差異はない。
声と比例して、まだ大人にはなりきっていないような、大人びた少年、といった印象を受ける。私より少し上くらいの年齢だろうか。
不思議な色の少年だった。
遠く広がる緑鮮やかな庭園にも、遮るもの一つない蒼空にも溶け込まない。
今まで見たどんな紫とも違う、浮き立つような、紫。
動きやすさを重視したように短く揃えられた透き通るような紫の髪は男性にしては細く、束のように幾本かが纏まって柔らかく風になびいている。
長めの前髪から覗く瞳は、髪よりももっと、ずっと深い紫に染まっていて。
その深紫も、すっと通った鼻梁も、固く結ばれた唇も表情を創らない。
今はただ、鏡のような瞳の表面に私の黄金を映していた。
何故だろう。さっきまであんなに怖いと思っていたのに。
圧倒的な存在感なのに、それと共にどうしようもない危うさを感じる少年から、目が離せない。
瞬きする間に消えてしまいそうな、そんな歪で儚いこの紫から。
少年の深紫と私の黄金が交錯する。
・・・いったい、どれほどの間そうしていたのだろう。
私は視線は逸らせないまま、意味もわからず震えそうになる唇を微かに開く。