黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
「私は・・・アムネシアスムリィ・ラ・セルティカ。セルティカ王国、王位継承権、第2位。」
私はよく回らない頭と舌で単語を羅列する。
すると私の言葉を聞いて目の前の少年は再び動きを止めた。
困惑するようにふらふらと剣先が地面に落ちる。
そしてすっかり毒気の抜けた様子で零した。
「第2位だと?待て・・・まさか、籠り姫・・・か?」
私が“籠り姫”だと気づいていなかったのか。
そんなことを思いつつも、思わず反射的に顔をしかめる。
でも、不思議といつもよりは不快だと感じない。
「その呼ばれ方は好きじゃないんだけど、な」
「生憎、この名しか、知らない。」
・・・ああ、なるほど。
“籠り姫”という呼ばれ方がいつもほどは嫌ではなかったのは、その呼び方に含むところがなかったからだ。ただ名前がわからなかったからそう呼んだだけ。
冷静に考えてみれば当たり前だ。国のトップシークレットにも近い私の存在が知られている方がおかしい。
それにしても・・・いつもこの言葉は、蔑みの感情と共に私に吐き出されるから、こうしてその言葉を聞くのはなんだか新鮮だった。
改めてじっと瞳を見つめ直すと、少年にゆっくりと視線を逸らされた。
少年は乏しい表情の中にはっきりとした困惑と動揺を浮かべ、地面に向かってひとり呟いている。
「まさか、こういうことだとは・・・だが確かに、髪の色も瞳の色も、力のことも、全て合点がいく、か」
ぼそぼそという呟きは耳には届くものの、いまいち要領を得ない。