黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
「何を、言ってるの?」
思わず少年にたずねてみたが、聞こえていないのか、聞こえていて無視されたのかはわからないが返事がない。
少年は相変わらず顎に手を添えて考え込んでいる。
・・・改めて見ると、彼はとても奇妙な格好をしていた。
王国の正規の軍のものだと伺える黒地に白のラインの入った軍服。片手に握っている長剣。
一目で兵士や騎士だろうとわかる姿だったが、彼はその上にかなり分厚い外套を羽織っている。
傍目にもごわごわとして見えるそれは、こんな初夏の陽気には明らかにそぐわない。
何故こんなものを着ているのだろうか。
ただ、それ以上に異質なのは、彼の左眼を覆う、銀製の眼帯だった。
遠目には何の花かはわからないけれど、何かの花の意匠が彫り込まれている。
長めの前髪に紛れてあまり見えないが、一度存在を認めてしまえばそれはあっさりと私の意識を奪った。
隻眼の騎士なんて、普通はありえないことだから。
当然だ。片目が使えないということは、それだけ視力が落ち、視野も狭まるということなのだから。
片目が潰れてなおこの少年には優れたものがあるのか。はたまた、そんなハンディキャップを背負ってでも隠さなければならないことがあるのか―――
そんなことを考えながら佇む少年をしばらくぼんやりと眺めてから、私は言わなければならなかったことを思い出した。
「あの・・・」
おずおずと話しかけるがやはり反応はない。