黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
深桃色がゆらりゆらりと揺れている。
ふわふわとした上品な布に包まれた安楽椅子に腰掛けた部屋の主は動きを止め振り返った。
「・・・ヘリオトロープ、今日は遅かったわね」
何度見ても慣れない。
すらりと伸びた手足は掴めば折れそうに細く、溶けてしまいそうに白い。
形の良い小さな顔は、バランス良く配置された目鼻に彩られている。
高い鼻も、緩く弧を描く桃色の唇ももちろん魅力的だが、何より人目を惹きつけるのは―――
強く輝く、大きな黄金色の双眼。
彼女はその妖しく光る魅惑するような黄金を細めて、絵具に浸したような深いアザレアピンクに染まる髪を波打たせる。
美しい、妙齢の女性だ。こんなに整った存在があってもいいのだろうかと思いたくなる程に。
ただ、彼女に畏敬の念は持ちはしても、恋慕を抱くことは決してない。
「すみません、女王。」
彼女は、俺にとって『女王』で、それ以上に『家族』だから。
軽く腰を折って発した俺の言葉に彼女はまるで少女のように顔をしかめ苦笑して手を軽く振る。
「もーっ、いつもやめてって言ってるでしょ、私はただの側室なのよ?」
それを言うなら俺だって何度も言っているのだが。
「・・・貴方がそう思っているとしても、世の中全ての人がそう思っているとしても、俺にとって女王は貴方だけですから」