黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
籠り姫の外のセカイ
こんこん、という頭を内側から叩かれるように響いた硬質な音で目をゆっくりと開ける。
いつものように最初に視界に映った見慣れた薄闇を見つめながら、いつの間にか止めていた息を一気に吐き出した。
また朝が、来た。
・・・全く、息苦しくてたまらない。
どうせ今日も昨日と変わらず、無彩色な1日が新しく積み重なるだけ。
私は、まだ眠たい目を瞬かせながら、蔦がモチーフだと窺える凝った意匠の鉄格子がかかった窓から、体は動かすことなく視線だけで外を見やった。
鉄の蔦の隙間から、幾筋かの細い光が私の目を優しく灼く。
そんなうららかな初夏の陽気に目を細めつつ、緩慢な動作でむくりと上体を起こしたところで、両開きのドアが開いた。
「姫様。お目覚め、で、しょうか」
先程ノックしたのも彼女だろう。ドアから顔をのぞかせる、ダークブラウンとペールホワイトを基調にしたメイド服に身を包んだ少女のたどたどしい問いに、私は微かにあごを引いた。
「本日のお召し物は、モスグリーンのシフォンドレスでよろしかったですか?」
その言葉に私はまたあごを引く。そして、小さく息をついた。
なんでもいいよ、服なんて。
私は天蓋付きのベッドからのそりと立ち上がり、メイドの少女が促すまま両手を軽く広げた。
する、する、としばらくの間僅かな衣擦れの音だけが室内に響く。
目の前でせっせと手を動かすメイドの少女も、私も、口を開かない。