黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
迫る足音
◇*◇
薄暗い塔には灯なんてない。
陽が落ちればそれと共に私は深い闇に沈む。
初夏の陽落ちは意外と早いもので、窓から差し込む光がオレンジに染まり、斜めに傾いたかと思えば、あっという間に黒に閉じ込められる。
くらい、くらい。
私は冷たいベッドの上で、幼子のように膝を抱える。
「くらいよ・・・」
この時間が、1番怖い。
大っ嫌いな、時間。
暗い場所が駄目な訳では無い。
明るかったものが、暗くなるのが、どうしようもなく怖いのだ。
視界が暗く閉ざされるこの瞬間は、まるで、空にまで拒絶されたように感じてしまうから。
空に感情がないことなんてわかっている。自然の摂理に則っているだけだなんて、わかっている。
だけど、毎日絶対に来るこの一瞬が・・・怖い。
私がこの空の色が解らなくなるまで、私のこの生命の灯火が尽きるまで、慣れることは決してないだろう。
「っう、こわいよぉっ・・・」
年端もいかない少女のように、私は声を震わせる。
鼻をすする音が部屋に響く。
・・・それだけ。
私には、父も母もいない。手を差し伸べてくれる家族がいない。
こんなとき、肩を抱き、優しく頭を撫でてくれる人がいない。
だから私は、ずっと、ずっと、子供のまま。
ずっと―――あたたかさを、探している。
今日も私は頬を濡らして、泣き疲れて目を閉じる。
そしてまた明日、薄暗さに、目を開けるのだ。