黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
こん、こん、こん、とためらいがちにドアがノックされる。
当然私は返事をしない―――できない。
だから、皆メイドたちは申し訳程度に間を開けた後、すぐにドアを開けるのだけれど。
今日は何故か、ドアは開かなかった。
悪戯か。
でも、こんな場所にわざわざ来てまでそんなことをする理由がない。
それに、ここは恐ろしい“籠り姫”が住んでいるのだ。そんなこと、誰もしようとしない。
そういろいろ考えたが、そもそも人の気配はドアの前から消えていなかった。
先の夢のこともあり、少し気が立っている私は、耐えきれずにそっとベッドを降りた。
右足、左足。
絨毯など敷かれているはずのない部屋の床はただの石で、素足の私を冷たく迎える。
いつもはメイドが靴を履かせてくれるから、冷たく感じなかったけれど。
足元からじわりと這い上がってくる冷気に、堪らずぶるっと身震いした。
そのままドアにに向かって足を進める。
ひたり、ひたり、と自分の足音が大きく響いている気がして、歩みを止めたくなってしまう。
それでもどうにかドアまでたどり着き、そっとノブを掴んだ。
それをゆっくりと押し捻ると、がしゃん、という金属音が想像以上に激しく響いて心臓が飛び跳ねる。
動くことができず回したノブを掴んだまま固まっていると、壁の向こう側から声がかかった。
「アムリィ?今、いいかい?」