黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う
謁見の間?
昨日は会談があったから呼ばれたけれど・・・今まで、片手に収まる程度しか呼ばれたことはないのに。
連日呼ばれるだなんて、一体何があるというのだろう。
兄様は話を続ける。
「というのもね、僕も偶然知ってしまったんだけど・・・アムネシアスムリィ・ラ・セルティカに結婚の申し込みの声が、かかったらしくてね」
―――え?
私に、結婚の申し込みが?
まさか。一体、どこの国だ。
あの会談の感じだと、どこも私のことを良くは思っていないようだったのに。
目を見開いたまま固まった私に、兄様が気遣わしげな視線を向けてくる。
「どうやら今朝早く、手紙が届いたらしいんだ。僕はたまたますれ違いざまに小耳に挟んだだけだから詳しいことは全くわからないのだけれど、伝えておいた方がいいと思ってね。
何も知らないまま連れていかれるよりは、幾分かましだろう?」
確かに、それはその通りだが。
いくら早く聞こうと、何度聞こうと、現実は変わらないのだ。
きっと、私に拒否権はない。
私は、きっとすぐに嫁に出されることとなるだろう。
かくん、と足から力が抜けた。
いつかは何処かへ行かなければならないと、わかっていた。
でも、いざそれが現実味を帯びてきたとき、こんなにも目の前が真っ暗になるとは思わなかった。